中国語で書かれたミステリー、中国、香港、台湾発のミステリーが、近年盛んに翻訳が行われるようになってきた。中国の紫金陳(ズー・ジンチェン)や香港の陳浩基(サイモン・チェン)などが、日本でも広く知られるようになってきたが、今回は紫金陳の作品について紹介したい。
情報統制の厳しい中国だが、社会の暗部や不正に目を向けて社会派ミステリーを書いているのが紫金陳だ。犯罪の瀬戸際、淵に立つ少年たちの揺れる心理を社会の暗部とともに描いたのが、彼の作品で中国で2001年に映像化され大ヒットとなった「悪童たち(原題 坏小孩)」だ。また「知能犯の時空トリック」などでは、不正と腐敗まみれの役人たちに虐げられた市民の怒りが爆発、必殺仕置き人の如く役人たちを抹殺していくストーリーとなっている。
紫金陳の作品には、現在の中国社会を反映するように監視カメラ「天網」をかいくぐるトリックがしばしば登場してくる。社会派ミステリーを書く彼が、現在の中国社会とどれだけ対峙していけるのか、今後の作品が楽しみだ。(anjinho)※関連記事は、推理道楽にもあります。
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